2010年7月4日日曜日

映画 『南極料理人』(2009)

思いがけなく面白い映画に出会うと、人は何とも言えない良い気分になったりするものです。
表題の『南極料理人』が、 まさにそういう映画でした。
南極観測基地の中でも標高が3800mを超える極寒の基地「ドームふじ」での越冬観測隊の日常、中でも食事を、料理担当隊員だった原作者西村淳氏の眼を通して描き出した作品。主人公を演じるのは、演技派の堺雅人。共演者も生瀬勝久、きたろう等、個性派ぞろい。

南極観測も往時と比べれば、比較にならない程快適になっているようですが、基幹基地の昭和基地から約1000kmも離れ、標高3800mを超える「ドームふじ基地」は、まさにエクスペディションと言える場所です。基地設置の目的は氷床深層掘削という氷床を3000m以上掘削して、氷床コアを採取し、その中に封じ込められている空気などを分析して、過去数十万年〜100万年間の気候変動を調べるというものです。

観測のためとは言え、生物はもとより、ウイルスさえも存在しないという極寒の地で、一年以上観測し、生活を続けるという厳しさは、なかなか想像出来ません。その過酷さを和らげ、気持ちを和ませるのが食事の持つ力だと改めて思う映画です。
これほど長期ではありませんが、私の冬山での経験も似たようなものでした。気温は−30℃位ですから、ドームふじの−50℃には比べようもありませんが、雪から水を作ることや限られた材料、限られた人間関係などは同じです。

この映画の持ち味は、過度な演出を控えながら、淡々とした生活の中で隊員達が見せる隠す事が出来ない滑稽さやペーソスです。面白い映画でした。

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