2011年3月29日火曜日

福島第1原発事故〜見えてきた事 フランスとの違い〜

ここに(リンク)フランスの原子力安全・放射線防護総局の支援組織である放射線防護原子力安全研究所(IRSN)が作成した3月12日〜20日間放出が続いたとの想定条件で計算された放射能雲大気中拡散シミュレーションがあります。放射能雲のトレーサーはセシウム137だそうです。
実際は21日以降も放出は続いていますが、参考にはなるかと。

このフランスでは原子力に関する安全を司る部局で、こうした情報を公開しているのですねぇ。フランスも原子力エネルギー開発を積極的に推進している国だそうですが、その情報の出し方や安全に関する考え方には、日本とは大きな違いがあるようです。

ここに(リンク)あるIRSN発表の別のPDFファイルを読むと分かる事ですが、下に引用した文章にあるように、評価は「合理的に過大評価」したというのです。

日本のNHKなどに登場して事故を矮小化しようとした学者や専門家、科学部記者達はもとより、SPEEDIによるシミュレーション結果の公表を渋った原子力安全委員会や官邸とは、全く逆の考え方ですね。

これまでの対応を見ると、日本の原子力に関する公的専門機関も政府も企業も、つまりは「最悪の想定」を十分にせず、たとえしていたとしてもその情報は公開せず、原子力の持つ利点だけに力点を置いて広報に努めていたということでしょう。事故が起こると何でも「想定外」という便利な用語で誤摩化す。

阪神大震災のあと、確か「危機管理センター」だったか、総理官邸に創設されたと思いますが、箱物だけ作って実践力のあるソフトの部分は欠如していたという事になります。まさに日本の持ち味発揮!?でしょうか。

被爆国の体験が「核アレルギー」を生んだ事も事実ですが、原発立地が「政策的」に「お金」で誘導されてきた事も、最悪想定を曖昧にさせてきた一面があるのかもしれませんが、その事をして今回の「3.11 FUKUSHIMA NUCLEAR DISASTER」の対応混乱や危機管理のお粗末さを生んだ事の理由や言い訳には出来ません。

原発のある市町村は政策的誘導に乗り原発を誘致し、一時期栄華を誇ったとしても、このような破壊的事故が一度起これば、その町へ帰れるのかも分からなくなるのです。既存施設のある自治体は一刻も早く最悪の事態を想定した対応策を作る必要があるでしょう。

この福島第一原発事故の今後がどうなるのかは、今のところ見当もつきませんが、対策や処理費用や影響を与えた分野や人的損害、そして国際的信用の喪失を考えると、原子力エネルギーに依存する収支はどうなのでしょうか。

電気エネルギーに依存する暮らしから離れられない我々国民一人一人に突き付けられた宿題と言えます。


以下にIRSN文書の一部分を引用します。

「IRSN による3 月22 日迄に福島第一原子力発電所から放出された放射能の見積もり評価発表
22/03/2011
福島第一原発事故による空気汚染のレベルを評価するために IRSN では3 月12 日-22
日間に事故のあった3 つの原子炉から放出されたであろう放射能量の評価を優先
的に行いました。この評価は、日本政府、又はIAEA から送られてくる情報の解釈
と現場での測定結果を合理的に過大評価(*)した上で、現実に近い放射線放出量の見積
もりを与えるものです。

圧力開放にともなう放射能放出は、燃料棒の大きな損傷に伴い最も早く放出される
放射性元素(希ガス、ヨウ素、セシウム、テルル等)です。この段階では計算の簡
略化のために、通常使用済みの燃料にみられる核種比率を適用し、より重大な放射
線の影響の及ぼす放射性元素のみを対象としました。放射能評価値は以下の通りで
す。(第一号機の炉心内燃料棒数:400本、第二号機と第三号機:548本)
• 希ガス 2E18 ベクレル
• ヨウ素 2 E 17 ベクレル
• セシウム 3 E 16 ベクレル
• テルル 9 E 16 ベクレル
参考として、上記の放射性元素の値はチェルノブイリの事故の推定放出量の約 10%
に相当します。ただし、
• これは 2011 年3 月22 日現在のデータに基づく最初の評価であり、
• 放射性元素の推定放出量(ベクレル値)だけでは放射線の影響は評価できま
せん。これは気象状況に大きく依存するからです。(放出の一部は太平洋上
に拡散されました)。
発電所境界で測定された放射線強度のピークの推移を基に放出された放射能の経時
変化を定め、それをIRSN による地域規模大気中拡散モデルとフランス気象庁による
北半球規模大気中拡散モデルの入力データとしました。」(*赤字強調は筆者)

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